【質問】高校経済:ペイオフのことが釈然としません。銀行は人の金を返さなくてもいいということですか?

〔質問〕
ペイオフという制度のことが釈然としません。銀行は人が預けた金を返さなくてもいいということですか?なぜ許されるのですか?
〔回答〕
まず、前提として、銀行に対する預金というのは「預金者が銀行に対して『貸している』」という扱いになります。
貸しているからこそ、(現在は金利水準が低いものの)利息を受け取ることができますし、
また、貸しているからこそ、銀行が返済しないときは、貸した方にも責任がある、という理屈の取引をしていることになります。

それに納得いかないということであれば、家で現金のまま保管しておいたり、株や不動産等に投資すればいい、という話になります。

(補足)
銀行預金は、盗難や紛失を防いだりしてくれますので、むしろコインロッカーのようにお金を払ってやってもらいたいくらいのサービスだったりもします。現に、近年、銀行口座の開設で費用が生じるケースも出てきていますが、その一環として捉えることもできます。
それに対して、実際には、自動的に「貸し付けて利息をもらえる取引」にしてもらっている、というものです。

〔詳細〕
(1)預金保険制度との関係(本当に全額踏み倒されたら困る)
まず、前提知識として、銀行は預金を現金のまま保管しているわけではなく、企業に貸し付けたり、株や国債などの金融商品で儲けたりしています。つまり、意外にも、銀行は現金をあまり持っていないのです。

で、もし、銀行の経営危機のニュースや噂が流れたら、ふつう預金者は出金しに殺到することになりますが、銀行にはすぐに返せるだけの現金がなく、金融商品を売ったり、他から借りてきたりして対応せざるをえなくなります。それでも返しきれない場合は、(経営危機が噂だけであっても)本当に経営破綻に至ることになり、連鎖的に他の企業の経営破綻も誘発していくことになります。
前述の「預金者が銀行に対して『貸している』」の話だと、銀行は預金を踏み倒せないこともないでしょうが、ただ、それが国内経済全体や国際経済に悪影響を及ぼす話にまで膨らんでしまうわけです。
そうならないように(特に預金者が出金に殺到しないように)、「慌てなくても1,000万円(とその利息)までならちゃんと返しますから、一気に来なくても大丈夫ですよ」というのが預金保険制度の狙いです。

逆に、それを超える額については、本来の経済取引関係どおり、「借金が返せない場合がある」というのを認めている、ということです。
 
 
(2)本当に預けているだけの場合
預金というと、ふつうは「普通預金」のことを指し、自動的に「預金者が銀行に対して『貸している』」という扱いになって、(預金保険制度の件を除けば)銀行が破綻したら返してはもらえないわけです。

一方で、預金の方法には、企業向けの「当座預金」や「普通預金(無利息型)」などの形態もあります。
これらは、本当に預けているだけだったり、振込用に現金を置いているだけ、というものです。貸しているわけではありませんので利息はもらえませんが、一方で、銀行は踏み倒せない仕組みになっています。

(参考)
万が一金融機関が破綻した場合に、預金保険で保護される預金などの額は以下のとおりです。
「当座預金」、「利息のつかない普通預金」など決済用預金(①決済サービスを提供できる、②預金者が払い戻しをいつでも請求できる、③利息がつかないという三つの要件を満たしている預金)に該当するものは、全額保護されます。
 利息のつく普通預金、定期預金、定期積金、掛金、元本補てん契約のある金銭信託(ビッグなどの貸付信託を含みます)、金融債(保護預り専用商品に限ります)などは、1金融機関ごとに合算して、 預金者1人当たり元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護されます。

(出所) 預金保険機構ホームページ

 

※ 理解を優先するために、あえて大雑把に書いてある場合があります

 
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