【質問】政治経済:直接投資を行った場合の、日本の金融収支の扱い

〔質問〕
国際収支の特に「金融収支」についての質問です。
「日本が海外に50億円の直接投資を行った場合、日本の金融収支はプラスになる。」との旨の説明が、使用している参考書でされていました。一方で、同じ参考書で「金融収支の、直接投資はプラス50億円になるが、50億円の支払いがあるので、その他投資はマイナス50億円になり、金融収支内ではプラスマイナス0になる。」との説明もありました。
個人的には「経常収支」+「資本移転等収支」-「金融収支」+「誤差脱漏」=0が成り立つためには、後者の説明の方がしっくりくるのですが、どちらの考え方が正しいのでしょうか。
(参考:畠山のスパっとわかる政治・経済 爽快講義)
〔回答〕
実際の参考書の文面は確認していないですが、少なくとも後者は正しいです。
現在の国際収支に関しては資産の増減に着目するものですが、直接投資に関しては資産に増減が見られないことも背景にあります。
〔詳細〕
まず、会計についてはストック(ある時点でどうなのか。資産と負債)と、フロー(一定期間内での動き。収入や支出のイメージ)の両面で捉えます。これは企業の会計でも同様です。
具体的には、「今年の元日時点で100万円の貯金がある」というようなことがストック、「今年1年間でバイトで10万円もらった」というようなことがフローです。

このとき「今年の終わり時点」におけるストックは「貯金が110万円」になっているわけですが、注目してもらいたいのは「ストックの増減」というのは「その期間のフロー」が原因になっているということで、
「バイト給料10万円(フロー)」=「貯金増加10万円(ストックの増減)」という見方ができるわけです。
この式を単純に移項すれば 10-10=0 となりますが、要はこれが経常収支のカウントの仕方で、「海外から儲けた内容」=「金融資産の増減(金融収支)」として見ていた、という話です。

一方の直接投資の場合については、例えば「20万円分の株を、20万円の現金を渡して受け取る」というようなことを行います。
つまり、元々「貯金100万円」だったのが「貯金80万円と株20万円」になるという「資産の内訳が変わるだけで、資産全体の増減はない(フロー上のやり取りがない)」という取引です。
ですので、「フロー0」=「ストックの増減0(株の増加分20-現金の減少分20でトータルでは0)」というような話になる、というものです。

なお、「なら、どうせ±0になるなら、そもそも無視でいいのでは?」と思うかもしれませんが、それだと「実際に20万円の直接投資が行われた」という記録がどこにも残らないことになってしまいます。

 

※ 理解を優先するために、あえて大雑把に書いてある場合があります

 
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