物理基礎:仕事の原理と仕事率

<ポイント>
・「ある仕事をするとき、道具を使っても使わなくても仕事の量は変わらない」ことを仕事の原理という
・道具を使って仕事をしても、「加える力が小さい分、長い距離を動かす」必要がある
・仕事率とは、「 1 秒間にする仕事の大きさ」のこと
(1)仕事の原理
「ある仕事をするとき、道具を使っても使わなくても仕事の量は変わらない」ことを仕事の原理といいます。

「高いところに物体を持ち上げる」という仕事をするとします。

物体を真上に持ち上げるとき、
(ア)そのまま上向きに持ち上げる
(イ)定滑車を使って持ち上げる
(ウ)動滑車を使って持ち上げる
と3通りの持ち上げ方を考えます。

すべての場合において、力を加える向きと移動する方向が同じであるため、
仕事W[J]=力F[N]・移動距離s[m] を用いて求めます。

(ア)そのまま上向きに持ち上げる
2 kg の物体を 1 m 持ち上げると、〔必要な仕事 W 〕= 20・1 = 20 J の仕事が必要。

(イ)定滑車を使って持ち上げる
定滑車は、力の向きは変えられるが、「引く力の大きさ」「引く距離」は変えられないので、
(ア)と同じ物体を 1 m 持ち上げる場合は、
下向きに 20 N の力で、1 m 引く必要があるため、
〔必要な仕事 W 〕= 20・1 = 20 J の仕事が必要。

(ウ)動滑車を使って持ち上げる
動滑車は、力の向きを変え、「引く力の大きさ」は ( 1/2 ) 倍になり、「引く距離」は 2 倍になるので、
(ア)と同じ物体を 1 m 持ち上げる場合は、
下向きに 10 N の力で、2m 引く必要があるため、
〔必要な仕事 W 〕= 10・2 = 20 J の仕事が必要。

今回は滑車を例に挙げましたが、
・斜面を使ってひっぱり上げる場合
・てこを使って持ち上げる場合
なども、「持ち上げるのに必要な力は小さくなるが、移動させる距離は長く」なります。

これが、仕事の原理です。

(2)仕事率
仕事率とは、「 1 秒間にする仕事の大きさ」のことです。
言い方を変えれば、「 1 秒あたりの仕事」ということです。

〔仕事率〕=〔仕事 W [J]〕÷〔かかった時間 t [s]〕で求めることができ、単位は W(ワット)を使います。

たとえば、
物体にかかる重力が 20 N で、これを 2 m 持ち上げるのに 8 秒かかったとします。
この仕事率[ W ]は、〔仕事の大きさ W [ J ]〕÷〔かかった時間 t [ s ]〕より、
( 20×2 ) ÷ 8 = 40 ÷ 8 = 5 [ W ] となります。

<補足>
なお、滑車の性質をまとめると、このようになります。

物体を真上に持ち上げるとき、そのまま持ち上げる場合と比べると、
【定滑車】力の向きは変えられるが、「引く力の大きさ」「引く距離」は変えられない
【動滑車】力の向きを変え、「引く力の大きさ」は ( 1/2 ) 倍になり、「引く距離」は 2 倍になる

<まとめ>
・「ある仕事をするとき、道具を使っても使わなくても仕事の量は変わらない」ことを仕事の原理という
・道具を使って仕事をしても、「加える力が小さい分、長い距離を動かす」必要がある
・仕事率とは、「 1 秒間にする仕事の大きさ」のこと

 

※ 理解を優先するために、あえて大雑把に書いてある場合があります

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